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<ノベル>
〜旅は道連れ情けなし〜
「はぁ、護衛は2人……目つきの悪いおっさんに、お嬢一人。泣けてくるわぁ〜」
少女ドウジは出発準備を整えつつ、集まった護衛を見てため息をついた。
「私は香主の命で、お前のライフを守る……だが、クソ呪いのかかったプリンセスのお使いとは聞いていなかったな」
ため息をつきたいのはこっちだと言いたげにドウジを見下げて、おっさんことユージン・ウォンは一人ごちた。
「親分、その隻眼はこわいから、これつけるといい」
そういって、佐々原栞が取り出したのはアイパッチ。
ウサギさんの刺繍がしてあるそれをドウジにさっとつけて、ふっとドウジの目の前に動く。
じっと、見た後くすりと笑い満足そうにうなづいた。
「どこでこないなもんを……まぁええ、おおきにな」
自分よりも若干背の高い栞をみつめ、再びドウジはため息をついた。
「はよ、元に戻りたいわ」
「親分はそのままでいいと思う。一緒に学校いけるし」
「さすがに小学生からやり直しは堪忍してぇな……」
「つまんない……」
つれないドウジにむすと栞は頬を膨らました。
そのとき、ガチャンという金属音が室内に響く。
「クソ漫才はおわったか? クソ溜めまでの大冒険をはじめようか」
ユージンはアサルトライフルを構え、タバコを吐き捨てた。
〜ドウジの大冒険〜
「OK、こっちだ……ゆっくりとこい」
ピラミッド内部への潜入、進行は順調だった。
ユージンが先頭にたち、ドウジと栞が着いていく。
傍からみれば、親子連れにみえるかもしれない……ユージンのもつ二丁拳銃がなければだが。
ゆっくり角に待機しているユージンのほうへ二人が歩いていく。
ユージンが舌打つ。
「クソ、豪勢な死体置き場だ。どこから、沸いてきた!」
タンタンタタタンと二丁拳銃がダンスのリズムを刻みだす。
「さすがにあんさんが凄腕でも、数が厳しいな」
ひょことユージンの背から顔出したドウジが見たのは廊下に湧き出してくる死体の群れ。
銃でいくらうっても、腕の一本、頭の一部でも残っていれば這いよってくる。
「クソったれ、場所を変える。耳をふさげっ!」
ユージンは胸元から手榴弾をだし、群れの中へ投げ込んだ。
「ゴォォォアァァァ」
人とは思えない叫び、その中に奇妙な声が混ざった。
「あぁ、あついあついっ!? マップを探しにきただけなのに〜っ!」
爆風の中、すすだらけになったクラスメイトPが紙切れをもって、駆けてきた。
「あんさんは、たしか脇役A」
「リチャードですよ、お嬢さん」
ドウジの言葉にすかさず突っ込みを入れるクラスメイトP。
「この人、導次親分……」
栞はドウジのアイパッチをめくりトレードマークの傷を見せた。
「え、導次さん!? レーギーナさんの呪いにかかったんですか!?」
「レーギーナって誰やねんっ!」
すぱぁんと軽快にドウジのもっていたハリセンが唸った。
「まったく、プリンセスはクソ与太話が好きらしい。町人B、お前も一緒にこい! 走れ! 走れ!」
和気藹々と話している傍ら、一人でミイラを開いてにしていたユージンは、区切りを見つけて通路を駆け出した。
「ま、まってくださいマップがあ、あぁぁ!?」
クラスメイトPが推定10時間かけてつくったマップはユージンの手榴弾によって、灰になっていた。
「いかなきゃ、迷子だよ。友人D」
「クラスメイ……じゃない、リチャードだよ〜」
先に駆け出す3人の後を涙ながらに追いかけるクラスメイトPであった。
〜因縁ある人探してます、要面接〜
「ぜんぜんみつからないね」
あれから、いくから探し回った(逃げ回ったともいう)がいまだに変化はない。
現在は落ちる天井をよけ、壁画のある大きな通路で一息ついているところである。
「過去の因縁とかやからむこうから狙ってくるとふんどるんやけどなぁ」
もってきたサンドイッチなどを食べつつドウジは眉を狭めて唸った。
「まだしばらく、このクソお遊戯は続くらしいな」
スーツの内ポケットからマガジンをだしてはガシャンと組み込みながら、ユージンはふぅと息をつく。
「そうだ、僕にいい考えがあるよ! 個人面談をすればいいんだよ!」
「クソ蛆でも涌いたか? クラスメイトP」
「リチャ……もう、それでいいです」
背中に哀愁をただよわせて、クラスメイトPはユージンに答えた。
「僕のロケーションエリアで狭い路地にしてドウジさんの写真とかで反応をみればいいんじゃないかなと!」
「まぁ、このクソったれな墓石で罠にかかるおまえを助けるよりは楽だな」
「やるだけやってみぃや、このまま虱潰しもさすがにしんどい」
「早速、客人だ。頼んだぞ、リチャード」
通路のそとからザッザッザッと大勢の足音が聞こえてくる。
銃を用意しつつユージンはクラスメイトPの名をよんだ。
「おぉ!? がんばるよ!」
ぐっと、クラスメイトPは拳をにぎり、エリアを展開させる。
ロスの町並みがクラスメイトPを中心に展開された。
埃くささが消え、スモッグとジャンクフードの香りが充満していく。
そして、コンクリートジャングルの裏路地へ一同は逃げる。
場にそぐわないミイラが追いかけ、路地で詰まりだす。
「はい、みなさーん。この写メの人物しってますかー」
クラスメイトPはそこでとまり、くるりとミイラたちのほうを向いた。
いつの間にかとっていた、サンドイッチをほおばるドウジの写メをミイラたちに見せだすクラスメイトP。
「オォォォ!!モエモエー」
「え?」
帰ってきたのは予想もしない反応。ミイラたちは昨今のオタクのように盛り上がってきたのだ。
「も、もえって……」
「「ドージタンハァハァ!」」
今まで以上に燃え(萌え?)あがったミイラたちがクラスメイトPの携帯に群がりだす。
「この展開きいてな……ギャァァァァァ!?」
文字通り踏んだりけったり、齧られたり。
そんなめにあっているPのところへほかのミイラを掻き分けて、王族のようなミイラが現れた。
「ドージタンハヨミガエッタ! コンドコソ、オレガケッコンスル!! ホカノダレニモワタサナイ!」
クラスメイトPから携帯を奪いファラオはガァァと咆哮をあげた。
「クソったれどもが、オタクなんて社会のクズがこの時代からいるとは……まぁいい、呪いの相手だ倒すぞ、ドウジ」
タバコに火をつけ、裏路地の奥から飛び出すユージン。
「あぁ、夢なら覚めてほしいわこんなできごと」
「親分、あきらめわるい」
続いて二人もでてくる。
「オォ、ドージターン!」
ファラオが興奮して、包帯をまいたおくから、何かが染み出してくる。
「ええい、迷惑な呪いをかけてくれたな、俺が成敗したるっ!」
「オォォ! オォォ! モエーモエー!」
ドウジが格好つけようも、敵は盛り上がるばかりだった。
そして、ファラオが自分のエリアを展開させた。
〜宿命の対決〜
ロケーションエリアの上書き。
ロスの町並が崩れ、古代エジプトの戦場となり、またミイラだったものも当時の姿へと戻りだす。
「古代王国の回想シーンかな……」
ぜはぜはと息をきらして、クラスメイトPがでてくると、そこには3人の美少女がいた。
「あれ、ユージンさんまでも美少女にっ!?」
「何!?」
ユージンがクラスメイトPの言葉に自らを返りみれば、衣装から姿まで今までの自分ではない。
変わらないものがあるとすれば、両手にもっている二丁拳銃。
「姿が変わろうと、変わらないものもあるか……ありがたいものだ」
「これで最後にするで!」
「うん、がんばる」
ドウジも栞も衣装が古代エジプト風にかわっている。変わってないものは自分が信じ続けているものだけ。
「ドージたん、わが妻となってもらおう! ゆけ、ドージたん、ファンクラブの諸君!」
生身となったファラオが手を高くあげ、そして下げた。
美少女3人対古代エジプト軍団がぶつかりあう。
栞の傘が一撃で雑魚を吹き飛ばし、ユージンの銃が打ち倒す。
「プリンセスドウジ! ボスを狙え! 雑魚は何とかする」
「親分……がんばる」
「おう、これが俺の怒りや、永遠にねむれぇぇぇっ!」
雑魚の頭を踏みつつドウジはすすみ、ファラオへ光の粒子をまとったハリセンを叩き込んだ。
それと同時に光が辺りを包み、戦いは終わった。
〜ドウジの奇妙な呪い、その後〜
激しい戦いのあと、導次は元に戻った。
悪役会にもいつものスーツにキセルを持った導次があるき周り平和が訪れた。
その後の調べによると、あのファラオはアイドルのストーカーだったらしい。
そんな没設定が具現化してしまったのが不幸だった。
なお、余談ではあるが著リチャード『マジカルドージと古代王国』なる本が発売されたが、悪役会が買い占めたそうな。
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クリエイターコメント | どうも、ぎりぎりですが完成しました。
こんな妙なお話に付き合っていただき感謝です。 各自の設定をうまく生かせていたでしょうか? 感想、突っ込みなどお待ちしております。
短いですが、これにて失礼します。
このたびは受注ありがとうございました!
それでは、またお互いの運命がめぐり合うときにお会いしましょう。 |
公開日時 | 2007-05-21(月) 00:30 |
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